鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
(気づかれたら心配かけちゃうから、早く行って戻らないと)

夜の森はまるで奥行きが増したような感じがした。

別荘から遠くなかったはずなのに、なかなか見つけられずさ迷い歩いた。

やっと懐中電灯の明かりの先に祠を見つけたが、喜びはない。

昼間に見たよりもずっと不気味で、今にものっぺらぼうが出てきそうだった。

(怖いわ。でも行かないと)

勇気を振り絞って祠に近づいていくと、急に眩しい光に照らされて木立の間に人の気配がした。

のっぺらぼうかと思って悲鳴を上げたが、『いた!』と少年の声がして現れたのは昴だった。

『やっぱりここだったんだ。見つかってよかった』

昴に続いて友達の少年ふたりと、昴と絢乃の父親たちもやってきて囲まれた。

『バカ娘が! どれだけ迷惑をかけたのかわかってるのか!』

父親に手を振り上げられて身構えたが、叩かれることはなかった。

そっと目を開けると、目の前に昴の背中があった。

『絢乃ちゃんを叱らないでください。悪いのは僕らなんです。昼間にあんな話をしたから。本当にすみませんでした』

昴の友達も揃って絢乃の父に頭を下げ、口々に事情を説明してくれた。

それから昴が振り向いた。

『絢乃ちゃん、ごめんね。でもどうしてひとりで祠に来たの? あんなに怖がっていたのに』

『だって、のっぺらぼうさん、お顔がなくて可哀想だったから……』

ポケットから出して見せたのは、折り紙で作った目と鼻と口だ。

首をすくめながら、やろうとしていたことを話す。

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