鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
今も兄心を向けてくれているとわかり、寂しさが和らぐ心地がした。

「美沙さんのことは、なにか言ってた?」

一番の気がかりを問いかけると、三条家に馴染んできていると教えてくれた。

距離を置いて正解だったとホッと胸を撫で下ろす。

「それが知りたかったのよ。伯母や従兄に連絡して聞くのはよくないと思ったから、心配するしかできなかったわ。今日はたまたまあの店の前を通ったの。もし従兄がいたら美沙さんの様子を聞けると思って」

「そうだったのか」

疑問がひとつ解けたと言いたげに頷いた彼が、急に黙り込んだ。

どうしたのかと思っていると、なにかを考えているような間を置いて口を開く。

「正直に話すよ。和志と話したのはそれだけじゃない。俺の方からは、君との夫婦関係の悩みも相談した」

(悩んでいたの?)

離婚の二文字が薄れるほど順調な気がしていたのは、絢乃だけだったのだろうか。

ショックを受けたが、妻らしいことはなにもしていないので嫌になられても仕方ない。

尽くしてくれる妻が欲しいのなら、別れるしかない。

(昴さんの方から離婚を切り出してくれるなら、願ったりなはずなのに)

胸が苦しくなって、やっと自分の気持ちがはっきりと見えた。

(別れたくない。私は昴さんとこのまま夫婦でいたいんだわ)

ここが自分の居場所だと感じた。

三条家ではなく、昴のいるこの家が。

(これが恋心というの?)

昴を信頼しているが、愛情だとは言い切れない。

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