鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
恋愛経験がないので、異性を愛する気持ちがどのようなものなのかわからなかった。

とにかく今は昴が離れていってしまう気がして怖くなり、引き留める言葉を探す。

「夫婦関係と言っても私たちはビジネス婚よ。メリットがあるうちはこのままでいいと思うの。悩む必要ないわ」

結婚の継続に彼の気持ちを向かせたい。

商談する時のような笑みを浮かべて説得すると、ため息をつかれた。

「まだまだ遠いな」

「なにが遠いの?」

「いや、なんでもない。ビジネス婚か。俺も最初はそういう意識だったな。山城建設の会長令嬢として君を見ていた。だけど子供の頃に出会っていたのを思い出してからは、君に近づきたくなったんだ。今はビジネスという意識はない」

(それって、つまり……)

夫婦関係の悩みとは、絢乃が不安に思っていたことと逆なのかもしれない。

期待に鼓動が速度を上げる中だ、昴が立ち上がった。

目の前にきて、「隣に座ってもいい?」と苦笑しながら聞いてくる。

それを防ぐためにふたり掛けのソファの真ん中に座っていたのだが、今は彼にそばにいてほしい。

横にずれて左側を空けると、昴が腰を下ろした。

『君に近づきたくなったんだ』

先ほどの彼の言葉を妙に意識してしまう。

「柄じゃないが、那須の別荘で会った時から結婚する運命だった気がしている。ビジネスだけの結婚なんてもったいないと思わないか?」

「よく、わからないわ……。昴さんは私とどうなりたいの?」

「心が通い合った本物の夫婦になりたい」

< 134 / 237 >

この作品をシェア

pagetop