鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
誠実そうな視線が、絢乃の頬を熱くする。

告白されたわけではないのに、心臓が大きく波打ち喜びが広がった。

(昴さんもこの結婚を続けたいのね)

別れ話にならなかったことに安堵したあとは、急に後ろめたさが広がった。

(運命の結婚だったと言ってくれたのに、私の理由は……)

表情を曇らせると誤解されてしまう。

「完全にビジネスの方が、絢乃さんは楽?」

「あっ、そうじゃないの。ごめんなさい。私も正直に話すわ。あなたを傷つけてしまいそうで怖いけど」

「構わない。今夜はお互いに腹を割って話そう。そうしないと俺たちは前に進めない」

鼓動が速まるのは距離が近いからか、それとも不安からか。

(前に進めない……そうよね)

今までとは違った目で見られるのを覚悟して打ち明ける。

「私は父を恨んでいるの。母が病死した話は前にしたわよね。喪が明けないうちに後妻と妹が家族になった話も知っているかしら?」

「ああ。和志から聞いている。継母と妹につらくあたられていた話も」

「大事なものを壊されたり、心ない言葉を浴びせられたりしたけど、家を出て何年も経つからあのふたりについてはどうでもいいの。でも父だけは絶対に許せない」

愛人との間に子供までもうけ、二重生活していた父に母は苦しめられた。

母の死の原因は父だと思っている。

娘の自分が無念を晴らしてあげなければ、いつになっても母は浮かばれないと打ち明けた。

「私の人生目標は父への復讐なの」

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