鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「できることなら離婚したいと思ってる?」

「最初は思っていたわ。でも今は違う。昴さんは信頼できる人だから。心が通い合う本物の夫婦。あなたが言った理想を私も追ってみたい」

昴がホッとしたように表情を緩めた。

その口角が上がりかけたのを見て、言葉をつけ足す。

あまり期待されても困るからだ。

「そうなれたらいいのにと思うだけで、自信はないわよ。交際経験も、恋すらしたことがないのよ」

心の貧しさを打ち明けて恥ずかしくなったが、彼は素敵に微笑んだ。

「俺たちならなれるよ。大丈夫」

(えっ……)

手の甲にぬくもりを感じて心臓が波打った。

包むように握ってくる大きな手から視線を彼の顔へと戻し、さらに胸が高鳴る。

精悍な眉の下には艶めく瞳。

色気を醸す彼を見たのは初めてだ。

形のいい唇が緩やかに開かれる。

「抱きしめていい?」

「話し合っている最中よ。どうして?」

「理想に近づくためだよ。正直な気持ちを伝え合うのも大事だが、それだけでは足りない。目指しているのは親友ではなく本物の夫婦だから。スキンシップは必要だろ」

「待って、心の準備が――」

「悪いが待てない」

両腕を体に回されて目を見開いた。

筋肉質の肩や腕、胸のたくましさを布越しに感じて心臓が暴れ出す。

頬は直接触れ合って、彼の香りがした。

ボディソープかシャンプーか、それとも香水なのかわからないが爽やかだ。

(この香り、嫌いじゃないわ)

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