鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
社員であっても信用していないからだ。

『はい。顧問税理士の先生はまっすぐ銀行に行かれるそうです。社長のお車は十二時四十五分に裏玄関前にご用意いたします』

「わかったわ」

『昼食はどうなさいますか?』

「今から取るわ。お願い」

その日によって外食だったり会議をしながらの仕出し弁当だったりするが、今日は手早く食べられるものの購入を大野に頼んでいた。

きっとサンドイッチかおにぎりを用意してくれているだろう。

食に興味がないので昼食はなんでもいい。

食べなくてもいいくらいだが、体調を崩しては困るので時間がもったいないと思いながらもなにか口にするようにしている。

用件を伝えたので電話を切ろうとしたが、『お待ちください』と止められた。

他の秘書が大野になにかを伝えている声が微かに聞こえる。

『第二事業部の部長から、山城社長に至急ご相談したいとの連絡がありました。どうなさいますか?』

おそらく第二事業部でも問題が発生したのだろう。

そっちもかとため息をつきたくなる。

後回しにして状況が悪化しては困るので、すぐに聞かなければならない。

「五分後に社長室に来るよう伝えて。昼食はいらないわ。悪いけど、処分するかあなたが食べて」

『承知いたしました』

大野の返答の声が少し緊張していた。

いら立ちが声に表れてしまったのかもしれない。

二時間前に淹れてもらったコーヒーだけを胃に流し込み、デスクトップのパソコンを操作する。

決裁待ちの稟議書は山積みだ。

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