鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
机上を見つめて半ば上の空で返事をし、視線を大野に戻した。

「ねぇ、質問してもいいかしら?」

「はい」

「普通は恋愛関係になってから結婚するものよね。その逆で結婚してから恋をしようとする場合、どうしたら恋愛感情が湧くの? そもそも恋心って、具体的にどういう気持ちのことをいうのかしら」

「はい……?」

株主総会開会直前に絢乃のストッキングが伝線してしまった時も少しも動じなかった大野が、目を丸くしている。

鉄の女社長が最も口にしなそうな質問だったからか、それとも夫婦関係の悩みを相談されているように感じたからかはわからない。

言葉を失っている彼女の顔を見て、苦笑した。

「おかしなことを聞いたわ。忘れて。昼食をお願い」

「承知いたしました」

一礼した大野だが、退室しようとせず足を止めていた。

数秒して口を開く。

「私事ですが、四年交際している恋人がいます」

「そうなの。結婚が決まったの?」

結婚するので働き方を変えたいという相談だろうかと予想した。

退職を希望されると優秀で相性のいい秘書をまた探さなければならず痛手である。

「いいえ、別れようかと思っているんです。出会った時は魅力に感じていた性格が、今では欠点に思えてきたので。私はそういう状況ですので社長が羨ましいです。これからパートナーを好きになっていけるんですから。恋愛してからの結婚より、逆の方がうまくいく場合もあると思います。普通がいいとは言えません」

「そう……」

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