鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「恋心を具体的に説明するのは難しいと思います。ですが好きになれば自覚できるものだとも思います。ああ、これが恋なんだって。難しく考えずパートナーと一緒に過ごせる時間を楽しまれてはいかがでしょう。答えになっていなかったらすみません」

「いいえ、とても参考になったわ。ありがとう」

(大野さんもパートナーとの関係に悩みがあるのね。誰もが少なからずそうなのかもしれないわ)

ドアが閉まりひとりきりになった室内で、秘書の言葉を振り返る。

(ああ、これが恋なんだって、私にもいつか思える日がくるかしら。一緒に過ごせる時間を楽しむ、か……)

マウスをクリックして、キーボードに指を走らせる。

稟議書やメールのチェックをしているのではなく、開いたのは飲食店の口コミサイトだ。

(私が決めていいのよね)

昴と約束したラーメン店の検索で、一緒に行くのを想像して探しているだけでも楽しかった。



翌日の午後、外出先から帰社した絢乃は社長室で着替えている。

マンションの建設予定地を視察中にゲリラ豪雨にあって濡れてしまったのだ。

前髪が額に張りつきメイクも崩れてしまったが、少しも苛立たない。

脱いだオフィススーツをたたんでミーティング用の椅子に置きながら、昨夜、昴と食べたラーメン思い出していた。

(とてもおいしかったわ)

絢乃が調べて選んだのは、鶏ガラベースのあっさり醤油味が人気の店だった。

すっきりしているのに旨味が強いスープにストレートの細麺がよく合っていた。

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