鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
具材は味付け玉子と鶏肉のチャーシュー、白髪ねぎと細切りのきくらげだ。

昴も気に入ってくれて、『絢乃さんに任せてよかった』と言ってくれたのが嬉しかった。

(また行きたいわ。昴さんと一緒に)

着替えを終えて崩れたメイクを直していると、ドアがノックされた。

ファンデーションケースの蓋を閉じ、「どうぞ」と声をかける。

内線電話で呼んだ大野が入ってきた。

「濡れたオフィススーツ、お願いできる?」

「早急にクリーニングにお出しします」

「そんなに急がなくていいわよ。留守の間、私宛に連絡はなかった?」

「面会希望のご連絡が二件ありました。こちらです」

渡されたタブレットに表示されているのは取引先の企業名で、連絡をくれた人の名刺をつけてくれている。

過去に会った日時と話した内容も添付してくれているので、今回の面会用件が容易に想像できた。

大野のこういう細やかな仕事ぶりに助けられている。

スケジュールを開いて空いている日時をピックアップし、相手への折り返しの連絡を指示した。

「承知いたしました」

「出かける前に頼んでいた件はどうだったかしら?」

タブレットを返しながら問うと、大野がわずかに顔を曇らせた。

「気遣いはいらないわ。正直に言って。大方の予想はついているから」

大野に頼んでいたのは、妹の仕事ぶりについてだ。

腹違いの妹は唯華(ゆいか)という。

絢乃とは九つ年が離れていて、私立の女子大の四年生だ。

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