鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
昨日はラーメン屋に行くためにハイパワーで仕事を片づけ、いつもより早い十八時半に退社した。

昴に連絡するとタクシーで迎えに来てくれて、正面玄関前から乗り込んだ。

ちょうど大野も帰るところだったので、業務中の外出時のように玄関前で見送られる形となった。

「それがどうしたの?」

「唯華さんが見ていたんです。社長の旦那様について聞かれました」

絢乃と昴を乗せたタクシーが発車してから、唯華が大野に駆け寄った。

『あなた、姉の秘書よね?』

『はい、そうです』

『姉と一緒にいた素敵な男性は誰なの?』

『えっ? 社長の旦那様ですが、ご存じないのですか?』

『うそっ、社長だっていうからてっきりダサいおじさんをイメージしてたのに。全然違うじゃない。パパはどうしてお姉ちゃんなんかに紹介したのよ』

悔しそうに独り言を吐き捨てて立ち去ったと大野が教えてくれた。

(昴さんが唯華の好みだったということ?)

面倒なことになる予感がして、眉をひそめた。

「唯華さんは、社長の旦那様と面識がなかったのですか?」

「ええ。あの子は面倒くさいと言って親族顔合わせに来なかったのよ」

なるほどと言いたげに頷いてから、大野が眉尻を下げた。

「余計なことをお耳に入れていいものか迷っていたのですが……」

「話してくれてよかったわ。妹が迷惑かけてごめんなさいね」

「いえ、私は直接的なかかわりが少ないので大丈夫です。第二事業部の方は大変そうですが――すみません、言葉が過ぎました」

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