鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「ち、違うわよ。粉糖を振りかける際に手に着いて、その手で頬を触ったから――」

慌てて否定すると、昴がプッと吹き出した。

「わかってるよ。からかってごめん」

可愛く拗ねられる性分ではない。

「従兄かと思ったわ。さすが仲のいい友達なだけあるわね」

すまし顔でチクリと言い、二枚の皿を手に背を向けた。

ダイニングテーブルへ向かおうとすると、後ろから抱きつくように両腕を腰に回された。

「きゃっ」

「夫なのを忘れられては困る。和志はこういう真似をしないだろ?」

耳元で囁かれて頬が熱くなる。

両手に皿を持っているので逃げられず、高まる鼓動と闘う。

「忘れてないわ。気分を害したなら謝るわよ」

「謝られるより、食べていいと言ってほしい」

頬に彼の唇が触れた。

軽く食んですぐに離される。

どうやらスキンシップは今日から一段ステージが上がったようだ。

驚きと恥ずかしさで声が震えそうになる。

「昴さんにお願いがあるの」

「なに?」

「このお皿をテーブルに運んでくれる? 今にも落としそうで怖いわ」

「オーケー」

笑って腕を離し、絢乃の言う通りにしてくれた彼にホッとした。

(今日は昴さんも休みと言ってたわよね。この調子で一日中、攻められると心臓が持たないわ。嫌じゃないけど……)

コーヒーを淹れてダイニングテーブルに向かい合い、朝食にする。

美味しいけれど半分食べると胃が重たくなってきた。

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