鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
勉強やお稽古事だけしていればいいという考えの父には内緒で、『夏休みは遊ばないと』と母が言ってくれたのだ。

熱い砂浜は賑わい、海は輝いていた。

すぐに溶けてしまいそうで急いでかき氷を食べたのを思い出した。

「そうね、海がいいかしら」

懐かしさに目を細めて言った時、電話が鳴った。

ふたりの携帯電話ではなく固定電話で、聞き慣れない着信音に少々驚く。

一応設置はしているものの、仕事もプライベートも携帯ばかりで家の電話は使っていなかった。

「俺が出るよ」

リビングボードの横にある電話台の前で受話器を取った彼を、ダイニングから見守る。

(勧誘か、世論調査?)

それとも間違い電話かと思ったが、昴が挨拶している。

「ご無沙汰しております。ええ、そうですね。近いうちにとしか今は言えず、すみません。はい、おります。少々お待ちください」

(私宛てなの?)

立ち上がった絢乃に、保留ボタンを押した彼が振り向いた。

「絢乃さんの実家から。お義母さんだよ」

(どうして……?)

継母が電話をかけてきたことは一度もない。

絢乃の携帯電話の番号も知らないのではないだろうか。

山城家の娘だと思っているのは唯華だけで、絢乃には興味がないから用もない。

不審に思いつつ、昴の方へ歩き出した二歩目でハッと用件に思い当たった。

(唯華だわ)

三日前、タクシーで迎えに来た昴を社屋前で唯華に見られた。

イメージと違い素敵な男性だったと、唯華が悔しがっていたそうだ。

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