鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
溜息をついてから、隣に立っている昴に顔を向けた。

「実家に行かなければならなくなったの。話があるんですって。申し訳ないけど、デートは次の機会にお願い。ごめんなさいね」

呼び出しを無視すると、何度も連絡が来そうだ。

忙しい時に電話をかけてこられるよりは仕事の予定が入っていない今日、すませてしまいたい。

「デートは延期でいいけど、実家に行けば嫌な目に遭うんじゃないか? 俺も一緒に行こう」

「ありがとう。でも遠慮するわ」

用件が想像つくからこそ、昴を巻き込みたくない。

せっかくの休日が潰されるのは、自分ひとりで十分だ。

「昴さんはゆっくりしていて」

辟易するような気持ちを隠して言うと、昴が顔を曇らせた。

「どんな話か俺にはわからないが、いいことではないんだろ? 俺が一緒にいれば、言葉は選んでくれそうな気がするんだが」

たしかにそうかもしれない。

『妹に譲りなさいよ』とは継母も唯華も言えないだろう。

昴が一緒の方が心強くもあるが、それでもきっぱりと断った。

「私と妹の問題で、昴さんには関係ないことなの。だからひとりで行くわ」

ごたごたに巻き込みたくないというのは本心だが、離婚の二文字を昴に聞かせたくないという理由もある。

本物の夫婦を目指そうとしている気持ちに水を差すようなものだろう。

(それと、唯華に会わせたくない気持ちもある)

昴が一緒に行けば、唯華が猫を被るのは想像できる。

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