鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
三階建てで地下室もある。車庫は五つあり、広い庭には西洋風の東屋や噴水があって、継母の趣味のバラがたくさん植えられていた。

今は花の時期ではないが、毒々しいほど鮮やかで派手な色合いのバラばかり好んで育てていたのを記憶している。

絢乃の母が生きていた頃とはまったく違う家のように、庭も建物も造り変えられてしまった。

黒い門の横の通用扉に手をかけたが開かない。

呼び出しておきながら鍵を開けていないようだ。

必要ないので実家の鍵は持っていなく、インターホンを鳴らした。

パタパタと足音がして、通用扉を開けてくれたのは家政婦だった。

「水沢さん、お久しぶりね。元気だった?」

山城家に三十年近く勤めている五十代半ばの女性で、気立てのいい人だ。

「ええ、元気ですよ。絢乃さんもお変わりなくて嬉しいです。お帰りなさいませ」

目尻に皺を寄せてくれた彼女が、その直後に鼻の付け根に皺を寄せた。

「門の鍵を少し前に開けておいたんですよ。誰が閉めたんですかね?」

小さな嫌がらせをしてくる犯人がわかっていると言いたげに玄関を睨んでいる。

水沢が継母と唯華をよく思っていないのは知っている。

父の再婚時に、『あんまりな仕打ちですよ。亡くなられた奥様と絢乃さんが可哀想』と彼女ともうひとりの家政婦が台所で泣いていた。

「あの人たちが、いつも迷惑をかけてごめんなさいね」

きっとワガママを言って困らせているのだろうと思って労った。

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