鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ひとり掛けのソファがふたつと三人掛けのソファがひとつ、コの字形に置かれている。

シャンデリアに大きなテレビ、美術館にありそうな彫刻など目を引くものは色々あるが、一番存在感があるのは唯華の白いグランドピアノだ。

今は三条家に置いてある絢乃のピアノよりずっといいものだが、宝の持ち腐れで唯華が弾いているのを見たのは五歳くらいまでだった。

なにを習わせてもすぐ辞めてしまう。

高級家具が詰め込まれて少々しつこさを覚えるリビングで、父がひとり掛けのソファに座り、継母が三人掛けに座っている。

唯華は父の横に立っていた。

家族の視線が一斉にこちらに向く。

後ろ手にドアを閉めた絢乃は、父から二歩離れた場所で足を止めた。

「離婚はしません。お話がそれだけでしたら帰ります」

真顔ではっきりと意志を伝えると、唯華が憤慨した様子で目の前に立った。

「待ちなさいよ。妹に譲れないなんてひどい姉ね。先に私に会わせてくれていたなら、昴さんは絶対に私を選んだのに。若くて美人なんだから当然よ。私から運命の人を奪ったのはお姉ちゃんの方よ」

「唯華、やめなさい」

「お姉ちゃんの味方をするなんて、パパひどいわ。ママ、なんとかしてよ!」

その時、リビングのドアがノックされた。

いらないと言ったが飲み物を持ってきた水沢が、取り込み中の雰囲気を感じてわざわざドアをノックしたのではないだろうか。

その予想は外れていて、「失礼します」と現れたのは昴だった。

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