鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「へぇ、泳いだの?」

「ええ。砂遊びに貝殻拾いも楽しかった。海の家でかき氷を買ってパラソルの下で食べたのよ」

そう言うと、昴がウインカーを上げた。

「ちょうどいいところに店がある。かき氷も売っているかもしれない」

ハワイ風の建物の壁に大きくカフェと書かれている。

パーキングは広く、パラソル付きのテラス席もたくさん並んでいた。

海を眺めながら休憩できるようだ。

昼時はとっくに過ぎているからかパーキングもテラス席も結構空きがあった。

車を止めて外へ出ると、やや強い潮風に髪がなびいた。

「ヘアゴムを持ってくればよかったわ」

横髪を何度も耳にかけながら言うと、昴がジャケットのポケットから水色のハンカチを出した。

「これで代用しよう。後ろを向いて」

「ありがとう……」

彼の長い指が絢乃の髪をすく。

手櫛で髪を束にして結わえてくれている間、胸が高鳴って仕方ない。

(恥ずかしいわ。でも、昴さんに触れられると気持ちいい)

他の男性なら絶対に断った。

パーソナルスペースに踏み込まれたくないからだ。

昴だと安心していられる。

夫婦の距離が昨日よりも近づいているのを感じ、嬉しく思った。

器にこぼれんばかりに盛られたかき氷を店内でふたつ買い、テラスに出た。

パラソルがついた四人掛けの丸テーブルに、隣り合って座る。

海を眺めながら食べるかき氷は美味しい。

< 171 / 237 >

この作品をシェア

pagetop