鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
溶ける前にとスプーンを忙しく動かしていたが、口内だけではなく体全体が冷えてきて半分も食べられずに手が止まった。

半袖ブラウスから出ている腕をさする。

羽織るものを一枚持ってくればよかったと思っていると、昴がジャケットを脱いで絢乃の肩にかけてくれた。

「ありがとう。昴さんは寒くないの?」

「ああ。ジャケットを車に置いてくればよかったと思っていたんだ」

それは優しい嘘だろう。

彼もかき氷を半分食べて手を休めていた。

「優しいのね。暖まったらすぐに返すわ」

絢乃が困っていると昴は気づいて助けてくれる。

実家で絢乃に加勢してくれた時の彼を振り返っていた。

唯華の内定取り消しの希望がまだ残されている気がするのは、昴のおかげである。

(真面目に働いてくれるなら入社を阻止したいとまで思わないけど、あの子のことだから心を入れ替えてくれないわ)

「今日はごめんなさい。でも、昴さんを巻き込みたくなかったから来なくていいと言ったのよ」

昴の眉尻が下がる。

「俺の助けはいらないか……。絢乃さんがひとりで解決できる人なのはわかっているよ。じっと待っていられなかったのは完全に俺の都合だ。人のことをワガママだと言えないな」

バツの悪そうな顔の彼に、絢乃は首を横に振った。

「結果として助けられたわ。来てくれてよかった。本心を明かすと、あなたに迷惑をかけたくなかったからだけじゃないの。唯華があなたを狙っているのがわかっていたから会わせたくなかったのよ」

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