鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「俺が君の妹になびくとでも?」

「そこまでは思っていなかったけど、聞いていた印象よりいい子だと思われるのも嫌だった。あなたにも同じ気持ちでいてほしいからよ。私もワガママね」

意外だと思われたのか、昴が少し驚いている。

フフッと自嘲気味に笑った絢乃は、「ごちそうさま」と完全にスプーンを置いた。

「残すのがもったいないけど、これ以上は食べられないわ」

冷たさもそうだが、そもそも量が多すぎる。

「俺も食べきれない。ひとつをシェアすればよかったな」

(かき氷をシェア? 考えたことなかったわ)

三条家での鍋料理は別として、子供の頃から食事もデザートもなんでもひとり分ずつ用意されていた。

街角でひとつのアイスクリームを分け合っている家族を見た時に不思議な心地がしたのを思い出す。

その時、多ければ残せばいいのにと思っていたが――。

(昴さんとなら、分け合いたい)

食べもののことだけではない。

喜びも悩みも、楽しさも苦労も。

それが心の通い合う本物の夫婦なのではないかと感じた。

「食器、下げてくるよ」

「私も行くわ」

片づけて店内から出たところで、ジャケットを彼に返した。

「もう大丈夫なのか?」

「まだ少し体が冷えてるけど、こうするから平気」

歩き出した彼の腕に自分の腕を絡ませる。

絢乃からはしそうにない行為だったからか、彼が驚いたように足を止めた。

「腕を組まれるのは嫌?」

「大歓迎だよ。どういう風の吹き回しかと思ったんだ」

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