鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
復讐という人生目標を達成するためには、心を鉄にして進み続けるしかないのだ。

なんとか仕事に区切りをつけて、十九時過ぎに社屋を出た。

タクシーに乗り、新居近くのフランス料理店で降りる。

有名店らしいが絢乃は初めて来る店で、『一緒に夕食を』と言って予約を入れたのは昴だった。

ひとりで店内に入るとピアノクラシックが控えめに流れていた。

落ち着いた雰囲気の中で上品な客たちが優雅に食事を楽しんでいる。

仕事着のパンツスーツのままだが、店に失礼のないようにダイヤのネックレスと揺れるイヤリングはつけてきた。

「いらっしゃいませ」

黒服の店員に名前を告げると、ホールではなく細い通路を進んだ先にある個室に案内された。

エレガントな雰囲気の八畳ほどの部屋の中央には、椅子が二脚とテーブルがある。

白いテーブルクロスの上にはキャンドルと水の入ったワイングラスがひとつだけ置かれていた。

約束の時間を十五分過ぎてしまったが、昴は食べずに待っていてくれたようだ。

「遅れてごめんなさい」

「気にしないで。俺も少し前に着いたところだから」

店員が引いてくれた椅子に腰を下ろしながら、彼の口調に戸惑った。

(昨日、口調を崩す約束をしたんだったわ)

新居はすぐに住み始められるよう、コーディネーターに整えてもらっていた。

それを確認しに行った時に、共同生活をする上でのお互いの要望を話した。

絢乃からは食事は別々にという話をした。

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