鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ドアが開けられ、部屋着姿の彼が顔を覗かせる。

片手には仕事用の携帯電話を持っていた。

「俺も急遽、アメリカに出張することになった。明後日からだけど。絢乃さんはどこの都市?」

「ニューヨークよ」

「同じだ。嬉しい偶然だな。泊まるホテルは?」

部屋に入って来た彼が絢乃の前にしゃがんだ。

用事があってドアを開けられたことは何度かあるが、部屋の中まで入られたのは初めてだ。

彼はいつもの調子だが、絢乃は緊張した。

横にベッドがあるから変に意識してしまうのだと気づき、恥ずかしい考えを慌てて頭から追い払おうとした。

(甘い雰囲気じゃないのに、なにを考えてるのよ)

平静を装ってホテル名を教えると、昴が地図アプリで検索して画面をこちらに向けた。

「俺の宿泊先はここ。二ブロックしか離れてない。歩いても行けるな」

「そうなの」

それがどうしたのかという気持ちで視線を交えると、彼が口角を上げた。

「滞在日が一泊かぶっているから、都合が合えば一緒に夜を過ごさないか?」

(えっ?)

一度頭から追いやった恥ずかしい想像が戻ってきてしまう。

(夜を一緒に……ベッドに誘われてるの?)

心臓を大きく波打たせたが、彼に口説いている雰囲気はない。

「俺の宿泊先は最上階のラウンジが夜景スポットとして知られているんだ。絢乃さんと飲みながら夜景を楽しめると思ったんだけど、どうした?」

固まっている絢乃に、彼が不思議そうな目を向けている。

ハッと我に返って、焦って返事をする。

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