鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「夜景がきれいに見えるのね。素敵だわ。でもごめんなさい。夜は接待会食があるの。レストランのあとで場所を移してまだ話すかもしれないし、終了時間の予測が立たないわ」

それは本当だが、咄嗟に断った理由は他にもある。

(昴さんと約束すると、頭がそれでいっぱいになってしまう。仕事が上の空になるのは困るわ)

きれいにたたんだオフィススーツを、意味もなく広げてやり直す。

(顔が熱い。お願い、気づかないで)

「わかった」と言って昴が腰を上げた。

「断ってごめんなさい」

「いや、仕事を優先させるのは当然だ。夜景は東京でも見られるよ。今度、夜のデートをしよう」

(夜のデート?)

「そ、そうね。楽しみにしてるわ」

素敵に微笑み、昴が部屋を出て行った。

胸に手を当て深呼吸する。

それから通勤バッグを探りポーチの中から親友を取り出した。

「うさちゃん、最近の私、少しおかしいの」

鼓動が高まりすぎて、昴とうまく話せない時がある。

会話のあとにおかしなことを言ったのではないかと気にしたり、もっと気の利いた言い方があったのにと後悔したり、心の中が忙しい。

今も夜のデートの誘いにもっと喜んだ方がよかったか、それともサラッと流した方がよかったかと考えてしまった。

誰にも言えない胸の内を明かすと、親友がビーズの目を丸くした。

(絢乃ちゃんは恋をしているのよ。よかったじゃない)

「この気持ちが?」

(あれ? まだピンときていないの?)

「ええ……」

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