鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
聞いたことない評価に今度は絢乃が戸惑う。

上昇するエレベーターの中で鉄の女社長のイメージが変わりかけているのを感じていた。

(自分が思うよりも昴さんの影響を受けているのかもしれないわ)

彼を思い出すと、早くも会いたくなった。

日本時間は九時過ぎだ。

きっと成田空港に着いた頃だろう。

(明日の接待、早めに終わらせられないかしら)

会うのを断っておきながら、一緒に夜景を見たい気持ちになっていた。



心配していた社員は翌朝には体調が回復した。

二日目も精力的に方々を回り、接待会食も終わりを迎えようとしている。

ここは有名な高級レストランの個室で、ワインをひとりで一本分空けて赤ら顔をしているのは下院議員の五十代の男性だ。

その妻と秘書をしているという息子家族も招待していた。

議員に帰国はいつかと聞かれたので、明日の昼頃の飛行機だと絢乃が答えた。

「それは残念だ。息子にニューヨークを案内させようと思っていたんだが」

「近いうちにまた訪米しますので、その時はぜひお願いいたします」

「楽しみにしているよ。次もこの店で食事をしよう」

二度目の高額接待を催促されたわけだが、こちらとしても願ったりだ。

初回の今日は親しくなるのが目的だったので仕事についてはサラッとしか話さなかった。

次は建設市場参入への具体的な助力をはっきりと求めるつもりでいる。

議員一家と握手をして店を出た。

お土産を渡し、手配した二台の車で帰っていく一家を笑顔で見送って肩の力を抜いた。
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