鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
これで仕事はすべて終わった。
明日の飛行機の出発時間まで社員たちには自由にすごしてもらいたい。
「おつかれさま」と三人を労い、ポケットマネーから百ドル札を数枚渡した。
「あなたたちは夜の観光を楽しんで。私は先にホテルに戻るわ」
「お心遣いありがとうございます。おつかれさまでした」
タクシーで宿泊先のホテルに戻ると、時刻は二十一時前だ。
議員の息子家族の子供が小学生だったので、二軒目の話は出なかった。
予想より早く帰ってこられて、すぐに頭に浮かんだのは昴の顔だ。
ロビーの中ほどで足を止め、ショルダーバッグから携帯電話を出した。
彼にメールを送ろうとしたが、思い直してやめる。
(商談中だと悪いわ。でも、仕事が終わってのんびりしている可能性も……)
迷った末に、Uターンしてホテルを出た。
二ブロックを歩いて昴の宿泊先のホテルに到着した。
五十階建てくらいだろうか。
たしかに最上階のラウンジからは夜景がきれいに見られそうだ。
仕事が終わった彼がラウンジでひとり、お酒を楽しんでいるのを期待する。
エントランスをくぐるとベルマンに宿泊客かと問われたので、バーラウンジに行きたいと答えた。
「宿泊客のみ利用できるのかしら?」
「いいえ、どなた様でもご利用可能です。こちらへどうぞ」
エレベーターまで案内してくれて、乗り込むと最上階のボタンまで押してくれた。
「ありがとう」
お礼を言ってチップを渡す。