鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
受け取った額に笑顔を見せた彼が、「最高の夜景をお楽しみください」と扉を閉めた。

上昇するエレベーターの中で鼓動を高まらせる。

(会えるかしら)

がっかりしたくないので期待しないように構えていたかったが無理だった。

もうすぐ会える気がして自然と笑みが浮かぶ。

扉が開くと、短い通路の先がすぐバーラウンジの入口だった。

コツコツとパンプスを鳴らして足を踏み入れる。

(すごいわ)

入口からでもパノラマのように広がる大都会の夜景が目に飛び込んできた。

夜景スポットとして知られているのに納得する。

展望台のように壁がガラス張りで、窓に向かって半円を描くカウンター席は満席のようだ。

「いらっしゃいませ」

席に案内しようと声をかけてきたのは黒いベストを着た女性スタッフだ。

「夫がこちらで飲んでいると思って寄ったんです。捜していいですか?」

「ええ、どうぞ」

「ありがとう」

テーブル席にはひとり客がいないように見えるので、カウンターに沿うように奥へと足を進める。

店内は照明が控えめで、近づかないと顔がわからない。

アジア人の観光客らしき人も結構いて、余計に捜しにくかった。

カウンターで飲んでいる客の後ろ姿を二十人ほど見送って――。

(いたわ!)

三メートルほど先にグラスビールに口をつけているスーツ姿の昴がいた。

喜びで胸を躍らせ声をかけようとしたが、足が止まった。

グラスを置いた彼が隣に座る若い女性と話している。

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