鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
肌に張り付くような不快感があるので、インナーまで染みているようだ。

「今世紀最大のミステイクだ」

「気にしないでください。帰るだけですので」

それよりも一刻も早くここを出たい。

騒がれると昴に気づかれそうなので急ごうとしたが、男性に腕を掴まれた。

「このホテルに部屋を取っているのかい?」

「いいえ」

「それなら帰れないだろう。タクシーに乗ろうにもその服だ。乗車を断られるよ。そうだ、私の部屋で待っていてくれないか。君がシャワーを浴びている間に、私が服を買ってこよう」

親切な申し出ではないだろう。

絢乃の警戒心が一気に高まった。

(わざとお酒をかけたわね?)

部屋に連れ込むために、ひとりで観光に来た外国人女性を狙っていたのかもしれない。

不慣れな外国では警察沙汰にするのは難しく泣き寝入りするだろうと考えて。

「結構よ」

すぐに腕を振り払ったが、獲物を逃がすまいと肩に毛深い腕を回された。

「楽しい旅の思い出を作らないか?」

「やめて。やめないとスタッフを――」

ラウンジスタッフを呼ぼうとしたが、その前に近くにいた男性客が気づいた。

「妻から離れるんだ」

絢乃の肩から男の腕を引きはがしてくれたのは昴だった。

(どうしよう。気づかれてしまったわ)

今度は違う焦りを覚えたが、昴に引き寄せられて片腕に抱かれると恋心が刺激された。

「亭主つきかよ」

舌打ちした男が笑いながら文句を言う。

「妻から目を離すから悪い男に狙われる。残念な夫だな」

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