鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
名刺を差し出すと、「日本の方は本当に律儀よね」と笑いながら彼女も名刺をくれた。

聞いたことのある建築デザイン会社の役員の肩書が書かれていた。

昴が英語で補足する。

「一般住宅のデザインで今後取引をお願いしようと思っているんだ。他社にはないものを作りたい」

立花リアルエステイトは、事業規模は控えめだが戸建ての建設も請け負っている。

それを専門にしている住宅メーカーに比べると知名度が低いので、デザイナーズ住宅で差別化を図る戦略なのだろう。

「我が社のデザイナーは精鋭ぞろいなのよ。絢乃さんの会社ともご縁があれば嬉しいわ。そうだ、あとでパンフレットをお送りしてもいいかしら?」

「ええ。拝見してご連絡します」

「ありがとう。嬉しい出会いだったわ。それでは私はこれで失礼します。ご夫婦でニューヨークの夜を楽しんで」

気を利かせて帰ってくれたと思い、昴に謝る。

「商談の邪魔をしてごめんなさい」

「仕事の話は終わっていたんだ。もう切り上げようと思っていたところだったから、ちょうどよかったよ」

彼の片腕が腰に回され、ラウンジの出口へと歩みを促される。

「絢乃さんの仕事はうまくいった?」

「ええ。いい感触だったわ。会食が早く終わったから、ここへ来てみたの」

「俺と夜景を見るために?」

隣に顔を向けると、ニッと口角をあげる彼と視線が交わった。

気持ちを見透かされている気がして目を逸らす。

「会いたかったのよ」

正直な気持ちを吐露すると、昴の唇が頬に触れた。

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