鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
そんな心境さえも見えているかのように彼だけは楽しそうで、悔しくなる。

「今日は意地悪なのね」

「照れている君が可愛くて、つい。すまなかった」

エレベーターを降りて廊下を進む。

静かなフロアの奥に昴の部屋のドアがあった。

カードキーで開けて入ると、自動で照明がつく。

手前にある濃い木目の室内ドアを指して彼が言う。

「バスルームはここ。脱いだ服は出しておいて。フロントにクリーニングの依頼をしておくから」

「ありがとう」

口説いてきたかと思ったら、今はやけにあっさりと用件だけ言って昴は突き当りの部屋へ入っていった。

情事を想像してしまったが、冗談だったのかと肩すかしを食らった気分になる。

けれどもそのおかげで落ち着いてシャワーを浴びることができた。

インナーにもお酒が染みてしまったので、ホテルのバスローブのみを身に着けて昴のいる部屋のドアを開けた。

なかなか広い部屋で、クイーンサイズのベッドにライティングデスク、ソファセットにミニキッチンまで備わっていた。

はめ殺しの窓は広く、窓辺に立っている昴はワイングラスを手にしている。

「シャワーをありがとう」

バスローブの下が裸なのを少々気にしつつ、彼の方へ歩み寄る。

「飲み足りなかったの?」

「まぁね」

他にも理由がありそうな言い方に聞こえた。

「白ワイン、絢乃さんも一緒に飲まない?」

「ええ、いただくわ」

ほんのりと琥珀色をおびた白ワインを注いでもらい、立ったまま乾杯する。

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