鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ひと口飲むと、ブドウの香りと甘みが口に広がり爽やかな後味が残る。

彼はビールが好きなようなので、絢乃のために甘口のデザートワインを注文してくれたのだろう。

心まで甘さに包まれフッと肩の力が抜けた。

カーテンが開けられたままの窓を見る。

「この部屋からもきれいに見えるわね」

ラウンジの方が遠くまで見渡せたが、すばるとふたりきりの部屋で見る方が楽しめる。

サイドテーブルにグラスを置いた彼が、絢乃から離れてベッドのヘッドボードに手を伸ばした。

なにをする気だろうと思っていると、長い指が並んでいるスイッチのひとつに触れ、フッとルームライトが消された。

控えめなダウンライトのみにされて驚いていると、隣に戻ってきた彼が絢乃の両肩に触れた。

キスの予感に体を硬くしたが、クルリと窓の方へ体の向きを戻されただけだった。

「こうするともっときれいに見えるだろ?」

「ええ……」

暗い部屋から見る夜景は先ほどより輝いていた。

対岸はマンハッタン島で高層ビル群の無数の窓に明かりが灯されている。

世界に名高い摩天楼も見えた。

その上空には黄色い大きな月が浮かんでいる。

大都会の街並みと海と月は幻想的なまでに美しい。

「満月までもう少しだな」

「ハーベストムーンね」

アメリカでは九月の満月をそう呼ぶと聞いたことがある。

収穫時期に月明かりが農作業を助けてくれるから、その名がついたそうだ。

「絢乃さんも知っているのか。博識だな」

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