鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「ということはあなたも博識ね。自画自賛?」

「しまった。五歳の頃の君がせっかく注意してくれたのに、今でもえらそうだ」

笑いながらなので冗談のようだが、すぐに否定した。

「昴さんはあの頃も今も心がきれいよ。私もあなたのようになれるといいのに」

父への黒い復讐心を胸に燃やしているうちは無理だろう。

昴がスッと真顔になったので、楽しい雰囲気を壊してしまったと気にした。

「自分たちの話ばかりしていたら、夜景に失礼よね。本当に素晴らしいわ。目に焼きつけておかないと」

十日もすれば完全な満月になっているだろうか。

明るく輝く大きな月を見つめていたが、彼は絢乃から視線を逸らそうとしなかった。

「自己肯定感が低いようだが、俺は君が好きだ」

心臓が大きく跳ね、見開いた目に真剣な顔をする彼が映る。

一拍おいて喜びが湧きかけたが、どういう意味の好きなのかがまだわからない。

(人として好感が持てるという意味?)

「ありがとう。好きだと言ってくれて嬉しいけど――」

その意味を問おうとしたが、遮られた。

「絢乃さんの気持ちがまだ俺に向いていないのはわかっているよ。だが、限界なんだ。許してくれ」

苦しげに眉根を寄せた彼にワイングラスを取り上げられた。

驚く絢乃の後ろ髪に男らしい指が潜り込み、引き寄せられて唇を奪われた。

強く押し当てられて、反射的に目を閉じる。

一度緩んだが、今度は唇を割って深く口づけられた。

(ま、待って。心の準備が……)

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