鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
たくましい胸を両手で押すと、離れてくれた。

冷静になろうとしているのか、彼が下を向いて大きく息をついた。

「君が欲しくて、こらえきれなかった。手荒な真似をしてすまない。冷水シャワーで頭を冷やしてくる」

止める間もなく部屋を出て行かれ、バスルームの扉が閉められた音がした。

(嫌がっていると思われたんだわ。どうしよう)

突然のキスにまだ鼓動が早鐘を打ち鳴らしているが、それよりも誤解させてしまったことに焦っていた。

余裕のない彼を見たのは初めてで、驚いてもいる。

(好きだと言ってくれたのに)

強引なキスのおかげで、彼も絢乃に恋心を抱いてくれているのが伝わった。

ずっと我慢していたようなので、昨日今日のことではないのだろう。

じわじわと広がる喜びに浸ってしまったが、ハッとして焦りがぶり返した。

(早く誤解を解かないと)

部屋を出た絢乃は、バスルームに繋がる木目のドアを開けた。

すりガラスの扉の向こうに均整の取れた彼のシルエットが見える。

ウブなくせに大胆なことをしていると気づいたが、はやる気持ちを抑えられない。

ドアに背を向けて声をかける。

「昴さん、シャワー中にごめんなさい。そのまま聞いてほしいの」

シャワーの音がやんで、「なに?」と返事があった。

「さっきは驚いて心の準備が追いつかなかっただけなのよ。キスが嫌だったわけじゃないわ」

「気を使わせてすまない」

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