鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ニューヨーク出張からひと月ほどが経った十月上旬。

昴の社長室にマネジメントアドバイザーの叔父が来ていた。

四人掛けのミーティングテーブルに向かい合い、経営について話し合っている。

「うん、いいんじゃないか。昴くんらしい戦略だな」

十分足らずで仕事の話が終わると、時刻は間もなく十二時だ。

「昼飯、外で一緒に食べないか?」と叔父に誘われた。

「弁当を持ってきているんだ」

「へぇ、手作り弁当か」

叔父が驚いた顔をした。

それ以上は聞いてこないが、妻が作って持たせてくれたと思っていそうだ。

叔父の中の絢乃のイメージと手作り弁当が似合わなかったのかもしれない。

けれども妻の手作り弁当という予想は、完全な正解ではなかった。

「それじゃ俺は出前を取ろう」

担当の女性秘書に近隣の飲食店の宅配メニューを持ってきてもらった。

「蕎麦がいいな。このセットにしよう」

天ぷら蕎麦と稲荷寿司を選んだ叔父が、秘書にも勧める。

「よかったらあなたもなにか頼んでくれないか? ひとり分の出前を店に頼むのは気が引ける。もちろんご馳走するよ」

「ひとり分ということは、社長はご注文なさらないんですか?」

「昴くんは愛妻弁当があるからな」

「まぁ、そうでしたか」

絢乃と同じ年齢の秘書が微笑んだ。

「それではお言葉に甘えて同じセットをいただきます。お蕎麦が好きなので嬉しいです」

すぐ近くの蕎麦屋なので二十分ほどで出前が届き、秘書が持ってきた。

お茶をいれて三人で昼食にする。

< 199 / 237 >

この作品をシェア

pagetop