鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
一度下がった店員が、シャンパンとアミューズを運んできた。

グラスを手に乾杯する。

「おつかれさま」

「昴さんも」

「今日は大変だった? 無理して仕事を切り上げてくれたんじゃないかと思って」

スーツ姿の彼は今日も凛々しく麗しく、疲れている感じはない。

一瞬、仕事が長引いたのは絢乃の力不足のせいだと言われた気がしたが、穏やかな笑みを見る限り他意はないようだ。

「月初めは業務量が多いから。いつものことよ。大変じゃないわ」

強がりを混ぜつつ答えると、昴が頷いた。

「大変じゃないと言える絢乃さんは強いな。俺も見習わないと」

クスッと余裕のある笑い方をされ、これには少しムッとした。

「昴さんなら、業務量の多い日でも悠々とこなせるという意味なのかしら?」

「悪く捉えないでくれ。俺は結構、人任せなんだ。もちろん投げやりなことはしない。人を見て任せられる部分を判断している。すべてをひとりで取り仕切るのは無理があるから。俺は最終確認と決裁係。あとは社にとって有益な人脈の形成と関係作りといった感じだな」

(そうなんだ……。全部、自分でやらないと気がすまない私と違うのね)

いつだったか、社長に就任する前に読んだインタビュー記事を思い出した。

経済界で注目されている他会社のCEOが言うには、優秀なリーダーとは実務処理能力が高い人ではなく、業務の割り振りがうまい人だ――たしか、そのような内容だったと思う。

それに照らし合わせると、経営者としては昴の方が優れているようだ。

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