鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「よかったな、昴くん。安心したよ。半年前はビジネスで結婚させていいものか、迷ったものだから」

絢乃との結婚を決めたと叔父に報告した時、『本当にいいのかい?』と三度も聞かれた。

夫婦関係がうまくいっているのかどうか、密かに心配してくれていたようだ。

「今はビジネス婚という感じはしない。本物の夫婦になれたと思っているよ」

叔父が目尻に皺をたくさん寄せて蕎麦をすすった。

昴も少々いびつなたこさんウインナーに箸を伸ばし、今頃同じ弁当を広げているだろうかと妻を想う。

(絢乃も誰かに自慢してる? いや、恥ずかしがり屋だから、ひとりでこっそりと食べていそうだ)

今は妻を絢乃と呼んでいる。

彼女にもそうしてほしかったが、年上を呼び捨てにするのに慣れていないと言われた。

妻からの呼ばれ方は今まで通りだが、夫婦関係はひと月前に比べてかなり深まっている。

そのきっかけは先月のニューヨーク出張に違いない。

出張までの昴は人知れず、葛藤する日々を送っていた。

絢乃に惚れてもらおうとスキンシップを増やしたが、そうすると自分が苦しい。

愛しい女性に触れてしまうと体を求めたくなり、今はまだその時期ではないと欲情を押さえるのに苦労した。

出張先のホテルで絢乃に告白された時はやっと手に入れたという大きな喜びが全身を駆け抜け、平常心ではいられなかった。

彼女がウブだとわかっていたのに夢中で一晩中何度も抱き、疲れ果てた状態で朝を迎えさせてしまったのだ。

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