鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ニュース番組にチャンネルを合わせると、女性キャスターが交通事故の報道をしていた。

その最中に画面の端からテレビスタッフの手が伸びて、テーブルに原稿を置く様子が映った。

それを手に取ったキャスターが臨時ニュースを読み上げる。

『江東区のマンションで壁に亀裂が生じ、入居者の一部が自主避難する事態が発生しました。山城建設が施工したこのマンションは先月竣工し入居が始まったばかりでした。地盤に打ち込む杭の長さ不足が指摘されており、山城建設が調査を――』

(これか。絢乃が言っていたトラブルは)

立花リアルエステイトが関与していない建物だが、のんきに構えてはいられない。

山城建設が施工した物件を多く抱えているからだ。

不安が広がると売りにくくなるのが想像できる。

過去に購入した客からの質問や苦情、制約済みの物件のキャンセルの電話もかかってきそうだ。

(詳しい情報がほしい。社に戻ろう)

妻と自社、ふたつの心配を抱えた昴は、脱いだばかりジャケットを掴むと足早に自宅を出た。



* * *



時刻は六時。徹夜明けの絢乃は早朝に重役会議を開いた。

父と絢乃、副社長や専務、常務たち計十人が楕円のテーブルを囲んでいた。

ズキズキと頭が痛むが薬を飲んでいる暇もない。

招集をかけた絢乃が最初に口を開く。

「トラブルの概要はメールでお伝えした通りですが、あらためて私の口から説明します」

重大な問題が発覚したのは、先月の十日に竣工した江東区の大規模マンションだ。

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