鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
地上十二階建て百六十戸のファミリー向けマンションで高い耐震性を売りにし、建設中に完売した人気物件だった。

販売会社から個々の住人に引き渡されたのは竣工の二日後からで、それから今日までの半月ほどで半分ほどの入居が済んでいる。

入居者のひとりが外壁に亀裂を発見したのは一週間ほど前だ。

販売会社にすぐ連絡したが、対応は不誠実だったという。

問題視する気はないと言いたげな態度で、販売会社から山城建設への報告もなかった。

それで憤慨した入居者は知り合いのマスコミ関係者にリークした。

ネタになると思ったテレビ局の調査により、建物全体の傾斜が判明した。

山城建設に取材を申し込まれたのが昨日の午前中のことだ。

問題を初めて知った社員がすぐに当該マンションを調査し、北東に一センチ沈んでいるのを確認した。

その原因はおそらく基礎にある。

真っ先に疑うべきは杭だ。

建てる時にはまず地盤を調査し、地下深くの支持層と呼ばれる硬い地層まで杭を打つ。

その杭の長さや本数が不足している可能性があった。

杭打ち施工は地特コンクリート株式会社という下請け業者が行ったものなので、すぐに社員から連絡させた。

しかし――。

『だから言ったじゃないですか。そちらで対応してください』

地特コンクリートの社長、稲元(いなもと)に怒ったように言われて以降、こちらからの連絡には応じてくれない。

代わりに当該マンションの杭の長さを改ざんしていた証拠となるデータが送られてきた。

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