鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
当然のことながら隠ぺいしていいはずはなく、絢乃は父に相談の上、昨日の夕方に販売会社と全戸の住人、行政とマスコミ数社に現在わかっている問題を報告したのだ。

絢乃が説明を終えると、重役たちが渋い面持ちで唸った。

全員が絢乃より二十歳以上年上の男性ばかりだ。

「社長、稲元さんにはまだ連絡がつかないんですか?」

「そうです。今日中にはなんとしても掴まえて、直接事情を聞きたいと思っています」

工事不良と数値改ざんの責任を取らせる前に、なぜ杭の長さ不足が判明した時点で相談しなかったのかと問いたい。

「地特の社長には呆れたものですな。逃げ隠れしてなんになる。うちから仕事をもらわないと潰れるというのに」

ひとりが悪く言うと、口々に非難の声が上がる。

「稲元さんに責任を取らせましょう。元請けの我が社も被害者だという印象を世間に与えないと」

「会長、週明けにマスコミも入れて入居者説明会を開きませんか? 一大事を引き起こした地特の社長から直接、謝罪させるべきだと思います」

絢乃は眉根を寄せた。

(それで済むと思っているなら、役員を下りてほしいわ)

下請けの仕事が原因でも、山城建設が責任を逃れられるわけではない。

業務改善命令などの行政処分は十分に考えられる。

なにより大切なのは入居者の安全ですぐにでも全員に引っ越してもらいたいが、応じてくれない人もいるだろう。

全戸の住人に補償内容に同意してもらうには相当の労力と時間がかかると思われた。

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