鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
その補償内容もまだ真っ白な状態でこれから協議しなければならない。

当該マンションの追加工事をするのか建て直すのかも、これから詳細な調査をして決めなければ。

建て直しとなった場合は損失が大きく、株主からの反対も予想される。

週明けの株価の下落も恐ろしく、株主への説明会を開けば物を投げつけられそうだ。

企業イメージの悪化も避けられないので、この問題の影響は長期間、尾を引くことだろう。

取引先にも謝罪をして回らなければならない。

先々の見通しの甘い重役たちはまだ稲元を責め続けており、有効な打開策は出そうにない。

絢乃と大勢の社員が徹夜で情報収集し、対応に追われていた中で、自宅で寝ていた人たちなので期待しても仕方ないのかもしれないが。

無意味な糾弾を止めたのは、眉間に深い皺を刻んだ父だった。

「もっとましな意見はないのか。現時点で社長しか頭を使っていないぞ。他の理事は必要ないと思っていいのか?」

そう言われた途端に、重役たちが口をつぐんだ。

(この人たちに意見を聞いても無駄よ。たとえ倒れても私がすべてをやらないと。山城建設を守りたいから)

父への復讐を遂げるために、潰すわけにいかないと思っているわけではない。

今、頭に浮かんでいるのは必死にトラブルに対応してくれている社員たちの顔だ。

『社員あっての会社です』

山城家の実家でそれを教えてくれた昴の顔も浮かんだ。

社長として命がけで社員を守らなければ。

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