鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「社長として責任を取らなければならないと思っています。ですが、この件が解決するまでは私に指揮を執らせてください」

辞任を覚悟した絢乃の唇が悔しさに震える。

一体なんのためにこれまで歯を食いしばってきたのかという、やるせない心境だ。

強く唇を噛んで耐えていると、隣で父も立ち上がった。

「絢乃は辞めさせない」

「しかし、誰かが責任を取らないと山城建設を守れません」

「責任は私が取る」

(えっ?)

この会社は父の宝だ。

自ら作り上げ心血注いで大きくした会社から、本当に退くつもりなのだろうか。

見開いた絢乃の目に、父の痛恨の表情が映った。

「唯華の面倒を見させてすまなかった。あの子の内定は取り消しだ」

指導担当の社員が思わず「やった」と声を漏らし、咳払いでごまかそうとしている。

内定取り消しは絢乃の強い希望でもあったが、今はそれに気が回らないほど動揺していた。

(お父さんが、会長を辞める……?)

「末の娘の不始末に心よりお詫びいたします。絢乃には引き続き、社長として全力を尽くしてもらう所存です。社員の皆さんもどうか力を貸してください」

テーブルに両手をついて父が頭を下げている。

それから覚悟を決めたような顔をして、ひとり先に会議室を出て行った。

会議室内がざわついている。

まだまだやることは山積みで早く動き出さなければと思うのに、絢乃の動揺はおさまらない。

(復讐を果たせるの?)

母の無念を晴らすため、父を会社から追い出すのが人生目標だった。

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