鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
それが計画よりずっと早く叶おうとしているのに、なぜかショックを受けている。

「山城社長」

進行役の社員から声をかけられてハッと我に返った。

「続けましょう」

椅子に座り直して息をつく。

なんとか気持ちを立て直そうとしたが、覚悟を決めたような父の顔が頭から離れなかった。



マンション住人への補償や引っ越しの交渉、株主への説明会、行政の調査にマスコミ対応と、厳しい風の吹く中で慌ただしく時間が過ぎた。

杭打ちの問題発覚から今日で一週間、まともに寝ていない絢乃はフラフラだが頭だけは冴えていた。

飲み終えた強力エナジードリンクの小瓶が三つ、執務机の横のくずかごに捨ててある。

今日は早朝の対策会議を終えてから社長室にこもり、数十社の取引先に謝罪の電話をかけていた。

当該マンションに関係していなくても山城建設と取引のある会社には多少の影響があるのはわかっている。

それは繋がりが深いほど大きいはずだ。

まずは電話で詫びて、後日改めて謝罪に伺う予定でいる。

時刻は十一時になるところで、二十一社目に電話をかけたのは立花リアルエステイトだ。

昴の携帯電話ではなく、会社の電話番号にかけている。

妻ではなく山城建設の代表として謝罪をするからだ。

窓口から秘書課へと繋がり、しばらく待たされる。

保留中の音楽を聴きながら、静かに昴を想った。

(一週間も会っていないんだわ)

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