鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
逆に考えると、絢乃は彼より子供じみているということになる。

それに気づいて先ほどよりも恥ずかしくなり、「ありがとう」と小声で言った。

彼は目を細めて頷いただけだ。

スープ料理の海老とトマトのガスパチョが出されたあとに、昴がスーツのポケットに手を入れた。

「これを受け取って」

テーブルに置かれたものはビロード張りの指輪ケースだ。

「エンゲージリング?」

「それとマリッジリングも。遅くなってすまない」

親族顔合わせの日に、好みがあるだろうから指輪を一緒に選びにいかないかと言われて断った。

そのあとに仕事が入っていたせいだけでなく、指輪自体がいらない。

欲しければ自分で買えるし、婚約や結婚を記念するような品は不用だ。

ビジネス婚なのだから。

「わざわざごめんなさいね。ありがとう」

用意してくれたものを断るのは失礼なので受け取った。

蓋を開けると、プラチナのリングに大粒ダイヤが輝いている。

デザインはおしゃれで品があり、マリッジリングの方はお揃いのデザインの小粒のダイヤが埋め込まれていた。

「きれいね」

本心だが、気持ちのこもらない贈り物に感動はできない。

はめてみたい気持ちにもなれず彼を見ると、左手の薬指に指輪があるのに気づいた。

シンプルなプラチナリングで、石があれば絢乃のマリッジリングと同じデザインだ。

自分のも一緒に購入したのだろう。

(私もつけないとダメかしら?)

迷っていると、彼が気持ちを汲んでくれた。

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