鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「指輪をするのが好きじゃないなら、無理にはめなくていいよ」

今もネックレスとイヤリングはつけているのに指輪はしていない。

だから好きではないと思われたのだろう。

(たまたまだけど、そういうことにしておくわ)

彼とお揃いのものを身に着ける気になれない。

夫婦になったと言っても届にサインをしただけで、心の距離は遠く離れていると感じていた。

「指になにかがついていると落ち着かないのよ。気遣ってくれてありがとう。眺めるだけでも幸せだわ」

蓋を閉じてハンドバッグにしまい、強めの笑みを浮かべた。

彼も口角は上向きだが、その視線はなにかを見定めようとするかのように絢乃の目に留まっている。

また鉄仮面と言われそうな予感がして視線を外し、出されたばかりの金目鯛のポアソンにナイフを入れた。

二時間以上かけて夕食を終え、店を出たあとはすぐに新居に向かった。

新築マンションの玄関をくぐったのは一時間ほど前になる。

間取りは4LDKで三十畳ほどのリビングダイニングは共有し、洋間は二部屋ずつ私室として使用する。

絢乃は寝室と書斎にしたが、昴は一室にジムのようなトレーニングマシンを置いている。

昨日、見せてもらった時に、『ジムに行く時間がないから』と言っていた。

自宅で日常的に鍛えているなら、バランスよく筋肉がついているのだろう。

それはスーツの上からでもなんとなく感じられた。

リビングには四人掛けとふたり掛けの白いソファ、木目が美しいローテーブルが置かれている。

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