鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
目を閉じてじっと罪悪感に耐えていると、膝の上の絢乃の手に彼の手がかぶさった。

心臓を波打たせて彼を見る。

「それは失敗であって、原因ではない。根本的な原因は唯華さんの人間性にある。つまり育て方を間違えた親の責任だ。それがわかっているからお義父さんは、自分が責任を取ると言ったんじゃないか?」

慰められているのに胸が苦しい。

「私、父の辞任を喜べないのよ」

喜ぶという言い方に首を傾げられたが、すぐに絢乃がなにを言いたいのか察してくれた。

「そうか、復讐か。絢乃の意図ではないが、結果として会社から追い出すという目標は達成されるな。それなのに嬉しくないということ?」

「ええ。どうしてなのか自分の気持ちがわからないの」

「辞めてほしくないのか?」

「違うわ。うまく言えないんだけど、心に大きな穴が開くような気分になる。空しいというのが近い気がする」

絢乃の手を離した昴が、腕組みをして目を閉じた。

自分でもわからない感情を真剣に考えさせて申し訳なくなる。

もういいと言おうとしたが、その前に彼が目を開けた。

「目標を失った気分になるからじゃないか? なにを目指せばいいのかわからないと、頑張る気にもなれないから」

(あっ、そうかもしれない)

父を辞任させるのはもう少し先の目標だった。

社長としての実績を積み絢乃自身が経営に自信を持てた時に、満を持して引退勧告するのを夢見て邁進してきた。

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