鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
それがこんなに早く、それも絢乃の努力とは無関係に実現することになり、これからなにを目標に頑張ればいいのかわからないから心に穴が開いた気分になっているのだ。

「きっとそれね。人生目標を達成したんじゃなく、失ったから空しいんだわ」

やっとモヤモヤが晴れたが、亡き母の顔が浮かんでハッとした。

「ということは、復讐はお母さんのためじゃなく、自分のためだったということ……?」

母を亡くしてからの実家での暮らしはつらかった。

いつか父に復讐することを夢見て、それを心の支えに生きてきた。

母の無念を晴らすというのは口実で、苦しい境遇の中でも頑張ることのできる理由がほしかったのではないだろうか。

「絢乃?」

気づいた事実に愕然とした。

「結局私、自分のことしか考えていなかったんだわ。少しも母の気持ちに寄り添えていなかった。親不孝ね」

(お母さん、ごめんなさい……)

自分を軽蔑して片手で目元を覆った。

その手が静かに震え出すと、昴に手を外されて繋がれた。

真顔の彼が首を横に振る。

「絢乃の人生だから口出しすべきではないと思っていたんだが、言わせてくれ。娘の君が母親の悔しさを引き継ぐ必要はないんじゃないか?」

「えっ?」

「絢乃のお母さんは、娘に復讐を願うような人なの?」

そう問われて記憶の中に母を蘇らせた。

『あなたは厳しすぎるわ。まだ子供なのよ? 絢乃から楽しみを奪わないで』

父の指導がいきすぎないように、いつも守ってくれたのは母だった。

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