鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
『絢乃が笑顔で過ごせますように』

新年の神社参拝で母が願うのは毎年変わらずそれで、病に倒れ話すのも苦しそうだった時にも『困ってない? 大丈夫?』と絢乃の心配をしてくれた。

息を引き取る前には――。

『お母さん、天国へ行ったら神様にお願いするから。絢乃がいつも幸せでいられますようにって……』

母の望みを思い出して、声を震わせる。

「忘れてた。お母さんがいつも私の幸せを願ってくれていたのを。私、間違った生き方をしていたみたい」

こらえきれずに涙があふれた。

昴の両手が体に回され抱き寄せられる。

広い肩に目をあて、涙をしみ込ませた。

そのまま数分間、静かに泣かせてもらっていると、耳元で落ち着いた彼の声がする。

「絢乃の人生、なにも間違えていないよ。いいも悪いもない。ただ一生懸命に歩んできた道が伸びているだけだ。これからもそうやって生きていこうよ。新しい目標に向かって」

ゆっくりと顔を上げた。

泣き顔を見られるのは恥ずかしいが、続きを聞きたい気持ちが勝る。

「どんな目標なの?」

すると昴の唇が挑戦的に弧を描いた。

「合併しないか? 統合ではなくグループ会社という位置づけで。一緒に高みを目指すという人生目標だ」

驚いて涙もピタリと止まる。

「今、合併してもあなたの会社にはデメリットしかないわよ?」

「長期的な視点では儲かると予想しているんだが。慈善事業をやる気はないから、勝算のない提案はしない」

(本当に?)

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