鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
ふわふわと温かく優しい夢の中では安心しきった自分がいて、隣で愛しい夫が微笑みかけてくれていた。



月日は流れ、翌年の桜の季節。

山城建設を揺るがす杭打ちトラブルの発覚からまもなく半年になろうとしている。

ここは都内の老舗ホテルの大ホール。

エレガントなデザインのロングスカートのツーピースを身にまとった絢乃は、レセプションパーティーのホストとして招待客に挨拶をして回っている。

「昨年は多大なるご心配をおかけして申し訳ございませんでした」

「いえいえ、私は山城社長を信じていましたから。きっとすぐに立て直されるはずだと。実際、その通りでした」

そう言って肩を揺らしたのは、取引先の経営者の中年男性だ。

「それにしてもリカバリー力には感服します。あの件がすでに遠い過去のようですな」

この半年間、社員一丸となって杭打ちトラブルを乗り切った。

当該マンションは現在建て直し中で、住人には仮住まいとして近郊のマンションを用意し、多額の補償もした。

これから建つマンションの部屋も取り壊したものより無償でグレードを上げ、全戸の住人から承諾のサインをもらうことができた。

行政からは業務改善命令が下されたが、真摯に受け止めて指示連絡系統を見直した。

経営者の電話一本の許可で、不正が起きることは二度とない。

株価はトラブル前に戻るどころか、上昇している。

二か月ほど前に立花リアルエステイトとの合併を発表したからだ。

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