鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
そして今日、グループ会社化を記念してのパーティーを催した。

取引先関係者だけではなく、今後のビジネス展開を考えて経済界の方々から客を招いている。

その数は約千人で立食形式だ。

壇上で挨拶してから二時間が経ちそろそろ終わろうとしているが、まだ招待客全員と握手できずにいた。

(金束商事の会長はどこかしら? HEC技研の社長とも話しておかないと)

会場内を見回していると、五メートルほど先にいるネイビースーツの見目好い男性と視線がぶつかった。昴だ。

彼もホストなので、挨拶回りに忙しい。

どちらからともなく歩み寄り、「おつかれさま」と小声で労い合う。

「昴さん、金束商事の会長さんを見なかった?」

「少し前に途中退席の挨拶を受けたよ」

「私も挨拶しておきたかったわ」

「さすがに招待客が多すぎたな」

「そうね。欲張らない方がよかったかもしれない。反省を次に生かしましょう」

お互いに一瞬、素の疲れた顔をさらしてしまい、同時に吹き出した。

「全員と握手をするのは諦めるわ」

「そうしよう。壇上で締めの挨拶をする前に、お義父さんと話しておこうか」

「ええ」

父は現在、元会長だ。

山城建設の経営からは完全に退いている。

心配であれこれ口出ししてくるだろうと思っていたが、三か月前の辞任時に『あとは絢乃にすべてを任せる』と言った通り連絡してくることはなく、このパーティーへの招待も最初は断ってきたほどだ。

それを説得して出席させたのは昴だった。

< 228 / 237 >

この作品をシェア

pagetop