鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
興奮気味の大声がして、思わず携帯を耳から離す。
「もう一度言ってくれない?」
「美沙が赤ちゃんを産んだんだよ。めちゃくちゃ感動だわ!」
ハッとして、離した携帯を耳に押し当てる。
「おめでとう! 母子ともに元気なの?」
「元気元気。でも陣痛中はマジでつらそうで、代わってやれないのがもどかしかった。昨夜から苦しんだのにあれで安産なんだって。出産は聞くよりずっと大変なんだな。美沙には感謝してるよ。それと――」
喜びと興奮で出産報告をせずにいられない気持ちはわかるが、マズいのではないかと思いストップをかけた。
「待って、お兄ちゃん」
つい親しげに呼んでしまい、言い直す。
「ごめんなさい、和志さんと呼ばないといけないんだったわ。出産を知らせてくれてありがとう。私もとても嬉しいわ。でも私に連絡すると美沙さんが気にするんじゃないかしら?」
絢乃が思い浮かべる美沙は、今も泣き顔のままだ。
けれども和志が笑った。
「美沙が絢乃にも知らせてほしいと言ったんだよ」
「えっ、本当に?」
「今、隣にいるよ。あの時はごめんなさい。赤ちゃん見に来てください、だって」
「行っていいの?」
「美沙はしっかりうちの家族だから。俺の呼び方も今まで通りでいいよ。さん付けは照れるだろ。退院したら、昴とふたりでぜひ子供に会いに来て。得意のアップルパイを焼くって美沙が張り切ってる」
「あ、ありがとう……!」
嬉しくて泣きそうになっていると、いつの間にか隣に来ていた昴に肩を抱かれた。