鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
怖気づきそうになる気持ちを押さえて、心の中で自分に言い聞かせる。

(子供さえできれば離婚も可能だわ。早いほうがいいのよ)

少しして昴がリビングに戻ってきた。

Vネックの黒いTシャツに涼しげな生地のルームパンツを穿いている。

初めて見る部屋着姿に心臓が波打った。

そういう姿でも彼はかっこいい。

洗いざらした髪をかき上げて、逞しそうな腕で冷蔵庫を開けている。

ペットボトルの水を取り出しただけなのに後ろ姿に色気を感じ、焦ってタブレットに視線を戻した。

「仕事?」

ペットボトルを片手に近づいてくるから鼓動が高まる。

「ただの経済ニュースよ」

動揺に気づかれないよう落ち着いた口調で答えたが、隣に座られて驚いて視線を合わせた。

四人掛けの方のソファが空いているのに、なぜ狭いこちら側に座るのか。

今度は隠しきれずに声が上ずってしまう。

「ど、どうしたの?」

「真面目だなと思って」

「昴さんは経済ニュースを読まないの?」

「読むけど、移動とかの隙間時間にチェックしてる。自宅では見ないよ。俺にとって家はくつろぐ場所だから」

「そうなの」

いつチェックしたっていい。人それぞれだと思うだけだが、くつろぎたいのなら隣り合って座らない方がいいだろう。

(それとも昴さんは、私がいても少しも緊張しないの?)

ローテーブル上のリモコンに手を伸ばした彼に、「テレビ見ていい?」と軽く聞かれた。

「お好きにどうぞ」

彼が合わせたチャンネルはスポーツニュースだ。

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