鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
「だんじりって知ってる?」

(私、なにを言ってるの!?)

「だんじり祭りのこと?」

「そ、そう」

「知ってるけど、それが?」

大阪府岸和田市の祭りで、だんじりと呼ばれる山車を引く。

開催は秋なのに、なぜ今その話題が出るのかと疑問に思われても仕方ない。

「今度の商談相手が関西の方で、毎年必ずだんじり祭りに参加しているそうなの。話題作りのために聞いておこうと思って」

焦って作った理由を昴は信じてくれた。

「ごめん、知っていると言っても実際に見たことはないんだ。俺よりそのタブレットに聞いた方がいい。動画もあると思うよ」

「そ、そうね」

置いたばかりのタブレットを手に取り、だんじり祭りを検索した。

動画を再生すると昴が「見せて」とお尻の位置を少し絢乃の方へずらした。

画面を彼の方へ傾けて一緒に視聴する。

「へぇ、スピード感があって勇壮だな。近くで見たら興奮しそうだ」

「すごい人ね。何人で綱を引いているのかしら?」

「百人はいそうだな」

(どうしてこんなことに……)

ボディソープかシャンプーか、自分が使っているものとは違う爽やかな香りがする。

腕が触れ合って、鼓動は高鳴りっぱなしだ。

それに加えて、夜は一刻一刻と深まっていく。

情事にどれくらいの時間が必要なのか知らないが、睡眠時間も確保したいので早く誘わなければと気が急いた。

強い緊張と焦りに苛まれているのはきっと自分だけだ。

そう思うと悔しくもなり、なにも言わずに動画を終了させた。

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