鉄の女社長は離婚したいのに人たらし御曹司に溺愛される
(絢乃さんと同じ歳か)

ふと妻の顔が頭に浮かんだ。

今朝は早朝会議でもあったのか、昴が起きる前に出勤したようで会っていない。

一緒に暮らし始めて一週間も経っていないが、妻のハードな仕事ぶりがよくわかった。

(必死なんだろうな)

絢乃はおそらく結婚を望んでいなかったと思うが、義父の意向に逆らえない雰囲気だった。

仕事でも自由な意思決定はできずコントロールされているのだろう。

義父の期待や要求に応えなければと、必死に業務をこなしているのが想像できた。

社長という立場は同じでも昴とは環境がかなり違う。

(つらくないんだろうか。もう少し肩の力を抜いてもいい気がするんだが)

パソコンを閉じ、机上を軽く片付けて帰る支度をしながら、絢乃との結婚に至るまでを振り返る。

『見合い?』

昨年の秋に母から電話で伝えられた用件に驚いた。

会ってほしい女性がいると言われたのだ。

三十歳を過ぎると結婚したい人はいないのかと時々聞かれていたが、見合いを勧められたのは初めてだった。

『お父さんの親友の娘さんなの。山城建設の会長さんと言った方がわかりやすいかしら。娘さんは今、社長を務めていらっしゃるそうよ。昴はもう覚えていないかもしれないけど、かなり前に婚約の話もあったでしょ』

『ああ、あの話か』

昴が大学に入学したばかりの頃、友人との飲み会から上機嫌で帰宅した父にこう言われた。

『お前の未来の嫁さんを決めてきたぞ』

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